ハンターハンター速報

つーか船抜け道あるのかよ

No.359 情報

■前夜祭(まつり)のあと夜は更け…

何十台ものモニターと機械が並ぶ部屋。インカムをつけた十数人のオペレーターがモニターを眺めている。

「3層3階中央トイレ前で暴行事件発生　警備室に連絡お願いします」
「先ほど4層16階で起きた窃盗事件の被疑者とみられる男を発見。5層12階に急行してください」
「4層7階廊下での火災報知器の作動は煙草の煙によるものであったとの報告がありました」
「3層11階第一大浴場付近に不審者がいるとの通報あり　注意を促す放送を一般渡航者区域に流してください」

オペレーターを見下ろせる位置にもモニターや機械が並んだスペースがあり、3人の男が座っている

「ったく出航前からこの調子じゃ先が思いやられるな」
「しかし港にいるうちに危険分子を降ろすことができたのはいいんじゃないでしょうか」
「いや今はおとなしい奴らも２ヶ月の航海中何を仕出かすかわからんぞ」
「おー怖」
「それにしてもハンター協会の連中が乗っていたのは幸いだったな」
「はい元々いる警備だけじゃとても人手が足りません」
「軍との仲介役もやってくれるしな　あいつら使えないくせに高圧的でむかついてたんだ」
「いくら軍でも警備の本職(プ口)にはある程度従わざるをえないだろうからな」
「ただのプ口じゃない世界最大級の警備会社ミザ口ックの社長様だぞ」

眼鏡をかけた男の前の機械がピピピと音を鳴らす

『室長　王族専用フ口アからお電話です』
「またかパーティーが終わってから何件目だ？」
「6件目ですね全て王子の護衛からです」
「誰の護衛か分かる？」
『第十四王子(ワブル)様の護衛です』
「了解俺が取るつないでくれ」

機械に備え付けられている受話器を取る室長

室長「もしもしご用件は何でございましょうか？」
クラピカ「急ですまないが万が一に備えて緊急時の避難経路を確認しておきたい」
クラピカ「非常階段や救命ボートの位置を示した資料があれば欲しいのだが」
室長（チッ　用件まで一緒かよ）
室長「申し訳ございません生憎そうした資料はありませんが船内の詳しい設備が記されている見取り図ならございます」
クラピカ「それで構わないFAXで送ってもらえるか？」
室長「すみません…システム管理室から王族専用フ口アへはFAXを送ることができない仕様になっておりまして…」
室長「管理室に直接お越しください」
クラピカ「?　1層(ここ)からシステム管理室のある5層にはいけないはずだが…」
室長「1層から5層まで行き来することができる管理スタッフ専用のエレベーターがございます」
クラピカ（エレベーター?　初耳だな…確認しておく必要があるか）
室長「暗証番号(パスコード)をお教えしますのでそちらをご利用ください」
クラピカ「承知した」
室長「一つの暗証番号(パスコード)は一度きりしか使えませんのでご注意ください」

何やら暗証番号について話す室長とクラピカ
電話を切る

（直接行くとなるとその間の警護が心配だな…）
（「出航セレモニーより前にいずれかの王子がﾀﾋ亡した場合継承戦自体が中止となる」）
（この条件(ルール)により王位継承戦に参加する者からの奇襲はそこまで心配する必要がないが…）
（逆に考慮しなければならないのは王子を暗倒することによって王位継承戦を中止に追い込もうとする者の存在!）
（王子が全員集合し前夜祭で気が緩んでいる今は絶好のタイミングといえるかもしれない…）
（その場合ワブル王子が狙われる可能性は…）
（十分あると考えていい）
（だがワブル王子を狙うということは同時にオイト王妃を手にかける覚悟も必要…）
（ならば暗殺の優先順位はそこまで高くないか…）
（しかし念には念をいれるべき）

時計を見るクラピカ

（この状況で襲ってくるとすれば念能力者の可能性が最も高い）
（そして狙うとすれば対象者(ターゲット)が確実に寝静まる真夜中）
（今は午後11時…少なくとも日付が変わる前には戻る必要があるな）
（1時間あれば行って帰ってくるには十分）
（しかし船内の構造を把握しながらとなるとそれほど余裕はない）
（今回は5層だけでも最低限の確認はしておこう）

ドアの前に立つ黒服に声をかけるクラピカ

クラピカ「システム管理室に行ってくる」
クラピカ「1時間以内に戻るからそれまでくれぐれも頼む」
黒服「分かりました」

廊下を歩くクラピカ

（廊下はﾀﾋ角が少なく隠れることができる場所もない）
（脱出にあたっては相当慎重にいくべきだな）

しばらく歩くと突き当たりにドアがあり、そこを開くとエレベーターホールになっている

（これがエレベーターか…荷物運搬用のものをスタッフの移動にも利用しているといった感じだな）
（脱出にも利用できそうだが逆もまた然り）
（乗組員の身辺調査もオレの鎖で行ったが完璧とはいえない）
（気を配る必要がありそうだ）

エレベーターの脇の機械に暗証番号を打ち込むとエレベーターが動き出す
扉が開き乗り込むクラピカ

（中は広い…上からの侵入は無理そうだが…これも念能力によっては可能か）

エレベーターが5層に到着する
エレベーターホールの正面と右側にドアがある

（正面は5層と同じく廊下につながる扉）
（そして右側がシステム管理室の扉）

右側のドアには鍵がかかっており、インターホンを押すクラピカ

『何の御用でしょうか?』
「先ほど電話をしたワブル王子の護衛だ船内の見取り図を取りに来た」
『少々お待ちください』

鍵が開く音
ドアを開けるとファイルを持った室長が立っている

室長「お待ちしておりました」
室長「規則上決められたスタッフ以外は中に入れないことになっておりますのでご理解の程よろしくお願いいたします」
室長「こちらが詳細見取り図になります」

分厚いファイルを受け取るクラピカ

クラピカ「膨大な量だな」

ファイルをパラパラとめくるクラピカ

クラピカ「頼んでおいてこのようなことを言うのもなんだが…これは貰っていいものなのか」
室長「ええ構いません同様の問い合わせが他の護衛の方からもありましたから用意させていただきました」
クラピカ「そうかありがとう」
クラピカ（やはり考えることは皆同じということか）
クラピカ（航海は長い…心してかからなければ）
室長「こちらが帰りの暗証番号(パス)です30分経過すると失効しますのでご注意ください」
クラピカ「承知した」

部屋を出るクラピカ
早速ファイルを開き5層のページを眺める

（5層は一般渡航者の客室と様々な倉庫・機械室などか…）
（予備の救命艇がある部屋と食糧備蓄倉庫は見ておきたいな）
（ここからは少し遠いが…30分いや20分あれば十分だな）

高度な情報戦が行われている

エレベーターホールから廊下に出る

（殺風景な廊下で1層とはえらい違いだな）
（別の船のようだ）

慎重に歩くクラピカ
そのとき悲鳴が廊下に響く

「キャー!!」

クラピカ「!!!」
クラピカ（こっちか!）

声がした方に走るクラピカ
廊下の角を曲がると男が女の肩を掴んでいる
顔は見えない

クラピカ「何をしている!!　手を放せ!!」

一瞬動きが止まる男
その隙をついて女が逃げる
追う男

クラピカ「待て!!」

するとクラピカに向かって何かを投げてくる男

クラピカ（!!!　念能力者か!!?）

避けるクラピカ
投げたものが壁に刺さる

クラピカ（トランプ!!）

トランプに気を取られ二人を見失うクラピカ
廊下には壁に刺さったトランプと床に落ちた黒縁メガネ
黒縁メガネを拾うクラピカ

クラピカ（まさか…!!）

■クラピカの脳裏によぎる影――